伝統を継承し、新しきに挑戦するリーダー。中窪耕司さん(48歳) 茶生産者・南山城村茶手もみ技術保存会会長

“宇治茶の郷”南山城村への誇り。

宇治茶といえば日本茶の高級ブランドとして知られている、しかし、今や宇治茶生産の隆盛を極めた宇治市内の都市化により、その生産地は京都府南東部の南山城村、和束町、宇治田原市周辺地域が主流となっている。南山城村では140戸の茶農家が総面積289ヘクタールの茶園で栽培を行っている。北は滋賀県甲賀市、東は三重県伊賀市、南は奈良県奈良市の3県境に接する京都府唯一の村である。村の中央を東西に美しい木津川が流れる中山間地域であるため、急峻な山肌に茶園が広がり、寒暖差の大きな気候が良質な茶葉を育んでいる。「とりわけ煎茶栽培においては府内第2位の生産量を誇る南山城村ですが、一見したところでは静岡や熊本のような茶園が望めないため、宇治茶の主産地としての認知度が低いのです」と、中窪さんは悔しがる。「もっと質の高いお茶をつくり、ひとりでも多くの方に南山城村を訪れていただき、お茶を飲んで感動していただきたい」。"宇治茶の郷"としての誇りをもっともっとアピールしたいと意気盛んだ。

手もみ茶を伝承する熱き情熱を胸に。

中窪さんは茶生産者としては4代目。今も現役のご両親と奥様、お二人の息子さんの3世代家族である。「中窪家の茶業をここまで広げたのは私の父です。今でも乗用摘菜機を駆使して摘茶に汗を流しています。ファクトリーオートメーションによる製茶工場も増え、効率的かつ衛生的な茶生産も積極的に進められています。後継者問題を考えると茶生産の近代化は安心して就農できる環境整備として有効ですが、現在の製茶技術の原点として元文3年(1738年)に宇治田原町の永谷宗円によって発案・発展した宇治茶手もみ製茶技術(宇治茶製法)の伝統文化の灯は消してはいけません」。平成20年に京都府無形文化財に指定され、その伝統と手もみならではの深く、まろやかで、甘味さえ感じる手もみ茶の世界を後世に伝承しながら、製茶技術を磨いていきたいという中窪さんの熱き情熱を感じた。現在、南山城村茶手もみ技術保存会の会員は約30名。今では若手が中心になって技術の向上に積極的に取り組んでいるという。京田辺市の師範や名人と呼ばれる手もみ茶の匠の下へ赴いたり、品評会への積極参加も呼びかけている。

後継者問題と茶業の将来の夢を語る。

今、茶価が低迷している。売れる茶をつくらなければ、将来を担う子供たちに後を継がないかと胸を張って言えないというのが現状のようだ。また、耕作放棄地に代表されるように、少子・高齢化も問題を深刻化させている。中窪さんが手もみ茶技術にこだわるのは、お茶本来のポテンシャルを引き出すものであり、手もみをマスターすれば製茶機械でも品質の高い茶を生産できるからだと自信に満ちた表情で話す。南山城村でなければ体感できないプレミアム感を創出すること。スタンプラリーやマイ湯呑みウォークラリーを通じて色々な茶生産者を訪れてもらう。自然を満喫しながら農家の軒先で味わうホンモノのお茶はひとしおであるに違いない。風味や香味が生産者によって違うという発見もあるだろう。京都市内等で販売されている宇治茶はブレンダーにより配合されたものなので、バランスが取れており誰もが高い評価を下すであろう。南山城村独自の採れたて宇治茶を味わうことがプレミアであり、贅沢なひとときと言える。「べにふうき茶もつくっていますし、今度は紅茶に挑戦したいですね。役場の方々も宇治茶と紅茶のコラボ茶を商品化しようとがんばっています」と中窪さんの顔がほころんだ。

手もみ茶製造かんたん講座

【1】
生茶葉を蒸す
【2】
茶切り(露切り):蒸し葉約3キログラムをホイロ(ブリキ板に和紙を張り柿渋を塗ったもの(助炭)を木枠で囲んだもので下から加熱する茶道具)に投じ、小手にかき上げて助炭一面に振り落とす。
【3】
横まくり:初めは助炭全面を利用し、軽く転がす。乾燥するに応じ徐々に力を加えていく。
【4】
玉解き・中上げ:横まくりでできた塊を解きほぐす。その後、助炭からもみ茶を一旦取り出し、水分を均一にしながら冷却を行う。その間、助炭面のアク取り等の清掃を行う。
【5】
もみ切り(茶揃え):片手まくり及びもみ切りを交互に行う。
【6】
でんぐり:葉の蒸れ及び上乾きを防ぎながら、より形を整えつつ製茶の香味を良くするために行う。茶を軽く持ち上げるような感じで手を左右交互にもむ。初めは軽く、乾燥するにつれ力を入れて茶に丸みをつける気持ちでもむ。
【7】
板ずり:木枠と茶葉の間に板をかませ、初めは軽く手のひらで葉を板から前に押すように転がし、葉の乾き具合を見ながら力を加えていく。最後は少しずつ力を弱め艶出しと製茶をして茶を一本一本針のように伸ばし仕上げる。
【8】
仕上げ後、助炭(約60度)に薄く拡散し時折反転し乾燥させる。
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